円安が止まらない本当の要因。購買力平価では説明できない“現代の為替”とは?【マイキー佐野 経済学】の動画解説

円安が止まらない本当の要因

見どころ:その1

経済アナリストなどの記事を読んでいると、購買力平価が為替と乖離していて意味ないんじゃないかとあるが、理由が書いていない。結局、購買力平価と為替が乖離している理由はなんだろうか?

円安が進んでも購買力平価が変わらない謎

10ヶ月ぶりに157円を超えて、高市さんがサッチャーじゃなくトラスではとういう話も出てくる中、21兆円規模の総合経済対策が閣議決定され、市場で円安、金利上昇、株安が起きた。2022年の頃、110円台だった円が、150円くらいまで上がり、円の価値は落ちた。ただ、その間も購買力平価(PPP)自体はほとんど横ばいの状態。それがどんどん円安になっていくとPPPと実際に為替自体が乖離していくという状態ができる。これがなぜ起きてしまったいるのか?円安になっているにも関わらず、購買力平価は変わっていない。

見どころ:その2

例えば、日本でハンバーガーを買った時に他の国だったらいくらになるのか?一言で言うと、物の値段から逆算した時に通貨の能力はどれくらいあるのか、これがPPPである。まずこのPPPには前提があり、世界中どこでもハンバーガーは同じ金額であるべきだということ。それの乖離したものを考えるのがPPPである。アメリカでビックマックが5ドルで売られている。日本で500円で売られているとすると、PPPは500円➗5ドルで100円となる。するとPPPは1ドル100円にも関わらず、市場だと1ドル150円となると円は実力以上に安く評価されているということになる。すると、外国人からすると日本の商品は安いということになる。商品は同じ価格(どの国でも)であるべきだという前提があったの見方。じゃあなぜ変化しないのか?PPPが機能していないんではないか。ポイントは3つ。本当に購買力平価は機能していないのか。または別の理由があるのか。日本に対してどんなメッセージ性があるのか。

見どころ:その3

PPPには2つの概念が存在している。ひとつは絶対的PPP、もうひとつが相対的PPP。

絶対的PPPは先ほどのビックマックの指標のようなもの。相対的PPPは2つの国のインフレ率の違い、物価上昇率の差に応じて為替レートが変動するという考え方。インフレ率の高い国の通貨の価値は低く、インフレ率の低い国の通貨の価値は高い状態になっているので実質的に購買力を維持しようとする。では日本はどちらなのか?日本はアメリカよりインフレ率は低い。アベノミクスはデフレ対策であったが、高市政権はインフレ対策。この3年間、アメリカのインフレ率が日本より圧倒的に高かった。

アメリカのインフレ率は9%まで行ってしまったが、日本は3〜4%でアメリカの方が高い。例えば、絶対的PPPで言うならば、低いインフレ率の日本の通貨価値は上がり、アメリカはインフレ率が高いから通貨価値は下がっているので相殺されるという考え方ができる。円高方向に行かなければならないはずが、現実は円安になっている。と言うことは、相対的なPPPを妨げる別の作用が働いている状態だと言える。

見どころ:その4

ここで見なければいけないのが、バラッサ・サムエルソン効果。基本的に経済成長が高い生産性が上がっているという国は、貿易財の生産性が上昇している状態で、賃金上昇を招く。となってくると色々なサービスに価格が転嫁される。となると、全体的に物価の水準が高くなり、実質為替レートが上がるという理論。日本もかつて同じように物価上昇を経験し、円高も経験しているというのはまさにバラッサ・サムエルソン効果である。経済成長が高くて、生産性が上がっているからお金が増え、貿易財が膨れ上がっていくからさらに生産性が向上し、賃金も上昇するので市場にばら撒かれサービスに転嫁され全体的に上がる。このバラッサ・サムエルソン効果により、かつて日本もバブルを作っていった。

ただ、今日本をアメリカと比較すると、生産性の伸び率は悪く、相対的に物価水準が低下し続けるということが起きている。つまりPPPと為替レートの乖離というのは、日本の稼ぐ力が全体的に低下を招いていて、市場が織り込んで円安に向かっている状態。つまり、今、逆バラッサ・サムエルソン効果が起きている。なので、OECDを見ると、日本の労働生産性の順位がどんどん低迷している。

見どころ:その5

為替レートからPPPが大きく乖離した状態をPPPパズルというのだが、これが想定されるよりも戻ってくるのが長いと言われている。なので、為替の変動と実体経済の粘着性のギャップが生まれている。このギャップが埋まってくるという流れが思ったよりもなぜ長いのか、これが未だに未解決問題である。例えば金融政策や投機筋の動きが活発化されると為替の変動スピードはすぐに評価される。日本が金利上げます、FRBが金利下げますと言ったらすぐに為替に評価されて上がったり下がったりする。それと同時に物価に連動されるのか?賃金に反映されるのか?例えば、アメリカが利下げすると言ってすぐ賃金に反映されるわけではない。実際に為替の動きと物価と賃金の調整スピードは離れることになる。これはPPPパズルが機能していなわけではなくて、調整のメカニズムが想像以上に長いということである。このPPPパズルがどれくらいで埋まるのかは分からない問題である。

見どころ:その6

2022年にアメリカが金利を0付近から5%付近まで引き上げた。これはインフレ対策。それに対して日本は金利を上げなかった。イールドカーブコントロールを維持した。それによってキャリートレードが起きた。これにより日本円売りドル買いの運用による円安のムーブが起きた。昔は日本は圧倒的な貿易黒字であった。輸出産業で稼いだ外貨を円に変えてこれが円相場の基盤となった。2022年は円安になり貿易赤字過去最大となった。化石燃料を輸入に依存している日本はエネルギーをドル建てで買っているので結果円安が加速する。通常であれば円安により価格競争が優位になるので輸出が増える。が、そこまでのカーブ効果は起きなかった。理由は2つある。1つは生産拠点が移転されていたから。2つ目は円安によってドル建ての販売価格を下げて市場を取らずに価格を据え置いた。円換算すると企業の収益は過去最大となった。ただ、稼いだ外貨を円に変えるメリットがないため海外で再投資し、なおかつ日本での課税を避けるために国内にお金を持ち込まない動きがあった。そして、そこにデジタル赤字が出てきた。

見どころ:その7

AIブームでデータセンターブームによりデジタル技術やデジタルサービスを海外から購入することで円売りドル買いの流れでさらに通貨が弱くなっているという状態になる。さらに日本は海外に比べて貯蓄する流れがあり、企業の現金保有率もアメリカに比べて高い。海外で稼いだお金は海外で投資するので、円を買う需要があまりない状態である。第一次所得収支を見ると日本が外国で得た配当や利子などの利益は2022年は35兆円の黒字だった。これが日本に戻ってきたらそんなに円安にならないはずである。が、再投資収益率を引いてみると経常黒字が一気に落ちる。月次ベースで見ると赤字に転落する。つまり、日本は資産大国ではあるが、キャッシュフローは日本に戻ってはこない。これが円高にならない金融面の最大の理由。PPPが日本で乖離しているのはただの市場の歪みではなく、日本経済の構造の変化であると言える。

見どころ:その8

この構造的な要因をざっくりまとめると、まず金利差のキャリートレード、デジタル赤字デジタル後進国である、海外で稼いだ分が海外で再投資されているので日本にお金が戻ってこない状態である。結論、購買力平価には2つの概念があり、相対的PPPを考えたのであれば普通は調整されるが調整されない原因があり、それは日本の経済構造が変わってきたから。


再び日本が円高になるための条件とは?

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