円高だった日本が円安になり再び円高になる条件

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2008年のサブプライムによる世界的金融危機(リーマンショック)から日本は超円高に進み、2012年の自民党安倍政権によるアベノミクスをきっかけに円安に向かった。その理由を解説。

日本が円高になった理由

2008年金融危機の円高の理由

2008年の金融危機以降、日米ともにQE(量的緩和)を実行したが、中身は全く違った。

アメリカは、国債・MBSを超大規模に購入、銀行のバランスシートを一気に拡張、結果、マネーストック(M2)が一気に増加。

それに対して日銀はマネタリーベースは増加したが、銀行から企業への貸出が少なく、日銀にお金が滞留し、すでに金利も低かったことからマネーストックはアメリカに比べて増えなかった。

FRBは本気でインフレを作りに行ってるのに対し、日銀はどうせデフレにまた戻るだろうと市場に判断され、日米のマネーストックの供給量の差から円高に向かった。

その後の円高の理由

その後も円高は進んだ。当時の状況は、

  • リーマンショックの後遺症
  • 東日本大震災
  • ユーロ危機(ギリシャ危機、イタリア・スペイン危機)

など、この当時の円はキャリートレードの巻き戻しと、避難通貨として円が買われていた。

キャリートレードの巻き戻しによる円高

この2009年〜2012年付近の世界情勢は恒常的にリスクオフの状態。

このとき市場が行ったのは、成長通貨を売って、円買い。

リスクが高まると、海外投資家は低金利で借りていた円を返済するために、円買いをする必要がある。そして円高が加速して行った。

動かない日米金利差

当時はアメリカも日本もゼロ金利で金利差はなかったので、ドル円は動かなかった。

避難通貨としての円買い

2012年付近まで、円は構造的に安全通貨だった。避難通貨として買われていた理由は、

  • 日本は海外に有する純資産が多い
  • 経常黒字国
  • 低インフレで貨幣価値が毀損されにくい
  • 安定社会

日本が円安に向かった理由

2012年に安倍政権になってから、アベノミクス政策により状況が変わってきた。

大きなきっかけは2013年の黒田バズーカだ。

黒田バズーカによる円安

  • 日銀が「物価目標2%」を掲げる
  • マネタリーベースを倍に増やす
  • 国債・ETFのの大量購入

この時点ではまだ、避難通貨としての価値はまだ残っていた。理由は、

  • 世界も金融緩和していた
  • 日米金利差は小さい
  • 日本は経常黒字

さらなる円安の大きな転換点

大規模な金融緩和は続いたものの、コロナ危機で世界的にインフレに向かい、大きな転換点になったのは2022年。

  1. 米国が急激な利上げ
    • FRB:ゼロ金利 → 5%近くまで
    • 日銀:YCC維持(0%固定)
  2. 大きな金利差
    • 円を持つ=毎年確実に損
    • 有事でも円を持つ合理性が消失
  3. インフレ発生+賃金が上がらない
    • 日本特有の物価上昇+賃金の上がらない「悪いインフレ」
    • 通貨の実質価値が下がる
  4. 経常収支が不安定に
    • エネルギー輸入価格高騰で赤字化
    • 「円に戻る理由」が減少

輸出企業の構造変化

円高時に企業は不利な日本国内でなく海外に拠点や工場を建設し、現地通貨建てで投資と雇用を行った。その利益は日本に還流することなく現地で再投資されることにより、円買い要因が消えて円安要因となった。

円高に向かうには?

再び円高になるには、円のキャリートレードが再び巻き戻すことが条件になってくる。

円キャリーが続いている理由は、

  1. 日銀が超低金利を固定
    • 借りる通貨として最適
  2. 為替が一方向(円安)
    • 円売りポジションを取れば、含み損リスクが小さい
  3. 他国に高金利資産がある
    • 米国債、米株、インド、メキシコなど


これらの要因で「円を借りて外貨建てで運用」が合理的。

円キャリートレードが巻き戻すケース

ケース1 「金利差が急速に縮小」

  • 日銀が利上げYCC完全撤廃
  • 米国が利下げに転じる

これらがゆっくり徐々にではなく急速に同時に起きそうな気配があれば、市場は先に織り込みに行くので急速に円高に進むトリガーとなる。

ケース2 「為替が一方向でなくなる」

円キャリーは、

  • 金利差
  • 為替の安定

が前提で、例えば、

  • ドル円が160→150→158のように荒れ始める
  • トレンドが不明確になる

このような状態になると、金利は取れても為替で負ける可能性があるので、円キャリートレードをしているポジションを閉じて。巻き戻しが加速する可能性がある。

ケース③「グローバルなリスクオフ」

米国を中心とした金融不安が起きると、円キャリーの返済により、ドル売り円買いが加速する。

  • 米金融システム不安(地銀・シャドーバンク)
  • 米国債市場の流動性危機
  • 株式市場の急落+VIX急騰

米国以外が原因となると、円は買われにくくなる可能性が高い。

ケース4 「日本国内のインフレが“制御不能”になる」

実際日銀が一番恐れているのは、インフレがコントロール出来なくなること。

  • インフレ率が3〜4%で定着
  • いつまでも賃金が追いつけない
  • 政治圧力で日銀が動かざるを得ない

こうなると、市場がインフレを抑えるには利上げしかないと確信し、実際に利上げする前に急速に円高にふれると思われる。


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