商号:ニデック株式会社
プライム市場、TOPIX core30、モーター世界最大手
- 2026年10月7日、ニデックの大株主であるオアシス・マネジメントが、取締役会に非公開化案の初期的な検討を求める
- 2026年9月30日、4月時点で2500億円規模と見込んでいた減損損失は実際には6320億円。
- 2025年10月28日、不適切会計の疑いによリ東証が特別注意銘柄に指定。ストップ安。
ニデックの不正会計
おおまかな経緯
「2024年に小さな会計上の問題が見つかった」「2025年に別の問題が発覚」→「調べたらグループ各地で多数の会計不正が見つかった」→「過年度決算を大幅に見直す段階に発展した
2024年に発覚した問題と、2025年から始まった一連の大規模な会計不正調査は、最初から同じ事件だったわけではない。
| 時期 | 何が起きたか | 意味 |
|---|---|---|
| 2024年5月 | 子会社ニデックドライブテクノロジーで売上の過大計上が発覚 | 最初の大きな会計問題 |
| 2024年 | 過年度決算を訂正 | ただし当初は限定的な問題と認識 |
| 2025年6月 | 有報提出延期 | イタリア子会社FIRの問題をさらに調査 |
| 2025年7月 | 中国子会社で約2億円の不適切会計疑い | 別の問題が発覚 |
| 2025年9月3日 | 第三者委員会を設置 | 「個別案件ではないのでは?」という段階へ |
| 2025年9月26日 | 有報提出、監査意見不表明 | 財務諸表の信頼性に重大な問題 |
| 2025年10月28日 | 東証が「特別注意銘柄」に指定 | 上場維持に関わる内部管理問題へ |
| 2026年2月27日 | 第三者委員会の調査報告 | 多数の会計不正を認定 |
| 2026年4月17日 | 最終報告 | さらに追加の不正を確認、影響額を整理 |
| 2026年4月以降 | 過年度決算訂正・決算遅延 | 「一時的な問題」ではなく会社全体の問題へ |
① 2024年5月:最初の問題
最初に問題が発覚したのは、ニデックの子会社ニデックドライブテクノロジー(NDTC)。
ニデックのグループ会社同士で行った売買を、ニデック全体の売上として計上。
② 2024年:過年度決算を訂正
この問題によって、2023年3月期・2024年3月期について内部統制上の「開示すべき重要な不備」が認識される。
2024年の段階では、「ニデック全体で組織的に会計不正が行われている」というところまでは判明していなかった。
③ 2025年6月:突然、2025年3月期の有報を出せなくなる
2025年6月、ニデックは2025年3月期の有価証券報告書を予定どおり6月30日に出せないと発表。
原因は、イタリア子会社NIDEC FIR INTERNATIONAL S.R.L.に関する貿易取引・関税問題。
調査対象が広く、連結財務諸表を確定できないため、有報の提出期限を9月26日まで延長。
④ 2025年7月:中国子会社でも約2億円の問題
2025年7月22日、別の子会社であるニデックテクノモータから、中国子会社で約1,000万元(当時約2億円)の購買一時金について不適切な会計処理の疑いが報告される。
⑤ 2025年9月3日:第三者委員会を設置
ニデックは2025年9月3日、第三者委員会を設置。
目的は、
- 不適切な会計処理の事実関係
- 影響額
- 原因
- 再発防止策
を調べることでした。
会社自身が、「個別のミスを直せば終わり」という段階ではないと判断。
⑥ 2025年9月26日:有価証券報告書をようやく提出
2025年9月26日に2025年3月期の有価証券報告書を提出。
しかし、監査法人が連結財務諸表について監査意見を表明せず。
つまり、「財務諸表が正しいと監査法人として意見を出せる状態ではない」という状態。
⑦ 2025年10月28日:東証が「特別注意銘柄」に指定
2025年10月28日、東京証券取引所がニデックを「特別注意銘柄」に指定。
単なる「決算ミス」ではなく、内部管理体制について改善が必要と判断される。
⑧ 2026年2月27日:第三者委員会の調査報告
第三者委員会の調査によって、ニデックグループの多数の拠点で、多数の会計不正が行われていたことが判明。
具体的には、棚卸資産→本来なら評価損を計上すべき在庫について、評価損の計上を回避・先送り
する。
固定資産本来なら減損などを検討すべき資産について、費用計上を避けるなど。
利益を悪化させる費用を先送りすることで、業績をよく見せる方向の処理が複数拠点で確認。
⑨ なぜそんなことが起きたのか
第三者委員会が指摘した大きな原因の一つが、「過度な業績プレッシャー」。
業績目標を達成したい→費用を今期に出したくない→在庫評価損などを先送り→利益が実態より良く見える→その処理が別の拠点にも存在
という形です。
⑩ 2026年4月17日:最終報告でさらに追加
第三者委員会はその後も調査を継続し、4月17日に最終報告。
ここでも追加の会計不正が発見。
代表例として挙げられたのが、ニデックドライブテクノロジーグループにおける売上の過大計上。
調査では最終的に、
- グループ395社について自己点検・財務分析
- 337人へのヒアリング
- 延べ612回のヒアリング
- 129人を対象としたフォレンジック調査
- 第三者委員会60回開催
という大規模な調査になった。
2026年9月30日発表の不正・業績悪化を踏まえて資産価値を見直した「減損損失6,321億円」の内訳
| 項目 | 金額 | 内容 |
|---|---|---|
| 非金融資産の減損損失 | 6,321億円 | のれん・固定資産などの価値を大幅に引き下げ |
| うちACIM | 2,988億円 | 家電・商業・産業用 |
| うちグループ会社事業 | 1,897億円 | グループ会社関連 |
| うちMOEN | 1,163億円 | 家電・商業・産業用 |
| うちAMEC | 184億円 | 車載 |
| うち機械事業 | 70億円 | 機械・オートメーション |
| うちSPMS | 19億円 | 精密小型モーター |
| 特別調査費用等 | 305億円 | 第三者委員会、外部専門家、追加監査など |
| その他・税金等 | △ | 為替差益などもあり |
| 最終赤字 | 5,646億円 | 前期は846.7億円の黒字 |
減損6,321億円のうち、ACIM+グループ会社+MOENだけで約6,048億円、ほぼ全体。
結論
「6,000億円の損失=6,000億円の現金が出ていった」という意味ではない。
減損は、
「今まで帳簿上1兆円の価値があると思っていた資産を、実際にはもっと価値が低いと判断して、帳簿価格を一気に下げた」
という会計処理。
今回の場合、特に大きいのが車載事業と家電・商業・産業用事業です。
製品グループ別に見ると、
- 車載:2,311億円
- 家電・商業・産業用:3,351億円
合計5,662億円。減損全体の約90%。
6594 ニデック 業績
決算期
3月
売上・営業利益・経常利益
| 売上 | 営業利益 | 経常利益 | |
| 2026年3月 | 2兆7087億円 | -5189億円 | -4962億円 |
| 2025年3月 | 2兆6063億円 | 1282億円 | 1245億円 |
| 2024年3月 | 2兆2347億円 | 1681億円 | 2016億円 |
| 2023年3月 | 2兆2300億円 | 899億円 | 1104億円 |
| 2022年3月 | 1兆9181億円 | 1703億円 | 1700億円 |

